お子さんの感染症、便秘・下痢、発疹、アレルギーなど、日常的によくみられる症状に幅広く対応いたします。地域の「かかりつけ医」として、急な体調不良から慢性的な症状まで丁寧に診療を行います。
神戸大学や兵庫県立こども病院などの小児専門医療機関で、先天性疾患をはじめ、さまざまな病気や特性をもつお子さんの総合的な診療や急性期診療に携わってきた経験を生かし、専門的な配慮が必要なお子さんの一般診療にも対応しています。
特に、発達障害などのために一般の医療機関では診療に配慮が必要なお子さんや、基礎疾患などのために受診先にお困りのお子さんについても、感染症や予防接種などの日常的な診療を安心して受けていただけるよう努めています。
また、熱性けいれんやてんかんなどの神経疾患のあるお子さんの予防接種についても、病状や治療内容を踏まえて対応いたします。
「てんかんがあるけれど予防接種を受けても大丈夫?」「発達障害があり、一般の医療機関では予防接種を受けにくい」といった場合も、どうぞお気軽にご相談ください。
専門的な知識や経験を必要とするお子さんも、できる限り地域の中で日常の小児科診療を受けられることを大切にしています。
お子さんの健やかな成長を支えるため、各種健診および定期・任意予防接種を実施しています。
- 対象年齢や接種時期については、自治体の案内をご確認ください。
- 麻疹・水ぼうそう・風疹など感染力の強い疾患が疑われる場合は、事前にお電話ください。
主な症状
発熱、咳、鼻水、発疹、嘔吐、下痢、便秘、頭痛、夜尿、湿疹など
主な疾患
風邪、インフルエンザ、RSウイルス、溶連菌感染症、胃腸炎、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、食物アレルギーなど
予防接種
生後2か月からの予防接種
乳児期の予防接種は、生後2か月から始まります。
この時期には、B型肝炎、肺炎球菌、五種混合、ロタウイルスなど複数のワクチンを接種します。乳児期は感染症によって重症化しやすい時期でもあるため、推奨されている時期に接種を開始し、必要な免疫を獲得していくことが重要です。
複数のワクチンを同時に接種することを心配されることがありますが、現在の乳児期の予防接種は同時接種を前提としてスケジュールが組まれています。当院でも、日本小児科学会等が推奨する標準的なスケジュールを基本として接種を行っています。
接種当日は体調を確認したうえで接種の可否を判断します。軽い鼻水や咳などがある場合でも、全身状態によっては接種可能です。一方、発熱や明らかな体調不良がある場合には延期することがあります。
ロタウイルスワクチンについて
ロタウイルス胃腸炎は、乳幼児に嘔吐や下痢を起こし、ときに高度の脱水などのため入院治療を必要とする感染症です。現在はワクチンの普及により、重症ロタウイルス胃腸炎を予防することが可能になっています。
国内で定期接種として使用されているロタウイルスワクチンには、次の2種類があります。
- ロタリックス®:1価、2回接種
- ロタテック®:5価、3回接種
重症ロタウイルス胃腸炎に対する予防効果について、両者に臨床的に明らかな差はないとされており、国もいずれか一方を優先して推奨しているわけではありません。そのため、どちらを選択しても標準的な予防接種となります。
一方、ワクチンに含まれるウイルス株は、ロタリックス®が1価、ロタテック®が5価という違いがあります。
当院では両者の臨床的な有効性は同等と考えていますが、特に希望がなく選択に迷われる場合には、含まれるウイルス株が多く、理論上より広い抗原をカバーする5価のロタテック®(3回接種)をお勧めしています。
これは、ロタテック®の方が臨床的に優れているという意味ではありません。接種回数が2回で終了するロタリックス®にも利点があり、いずれを選択しても十分な予防効果が期待できます。
ロタウイルスワクチンには接種可能な期間が定められています。特に初回接種は生後14週6日までに行うことが推奨されているため、他の定期接種と同様、生後2か月から開始することをお勧めします。
基礎疾患のあるお子さんの予防接種
熱性けいれんやてんかんなどの神経疾患、発達上の問題、その他の基礎疾患がある場合にも、多くの場合は通常のスケジュールで予防接種が可能です。
一方、疾患の種類や治療内容によっては、接種時期やワクチンの選択について個別の判断が必要になることがあります。当院では、基礎疾患やこれまでの経過を確認したうえで予防接種を行っています。
小児の定期予防接種、インフルエンザワクチンを行っています。その他のワクチンをご希望の方は電話でご相談ください。
子どもの風邪
風邪はウイルス感染による鼻水、鼻詰まりを呈する疾患で、半数は10日以内に、9割は15日以内に改善します。原因の約半分はライノウィルス、そのほかコロナウィルス、アデノウィルス、インフルエンザウィルス、エコーウィルス、コクサッキーウィルス、RSウィルスなどがあります。これらのウィルスのうち治療薬があるのは、インフルエンザウィルスとコロナウィルスになります。そのため、治療は発熱、鼻水、咳などの症状を和らげながら回復を待つ対症療法が中心になります。抗菌薬(抗生物質)はウイルスには効果がないため、中耳炎や副鼻腔炎の合併など細菌感染症が疑われる場合など、必要性を判断して使用します。緊急受診の必要はなく、通常の診察時間内の診察で問題ありません。
子どもの咳・長引く咳
風邪の後の咳は意外に長く続き、1ー2週間は続くと言われています。一方、長引く咳の中には喘息、副鼻腔炎、百日咳など、別の原因が隠れていることもあります。「咳が長い=重い病気」というわけではありませんが、夜間に咳で眠れないような呼吸苦を認める場合、呼吸が速い・ゼーゼーとした音が聞こえる場合などには、再度受診されることをおすすめします。
発熱
子どもは感染症などで高熱を出すことがよくあります。熱の高さだけで重症度が決まるわけではなく、水分が取れているか、呼びかけへの反応、呼吸状態、けいれんの有無など、全身状態を見ることが重要です。気道・呼吸(Airway, Breathe)、循環(Circulation: 尿量が少ない、手足の色が悪い)、意識障害(呼びかけへの反応が乏しい場合、けいれんを伴う場合)などには、早めの受診をご検討ください。また、水分摂取が困難な場合には、救急受診をご検討ください。
手足口病
手足口病は、主に乳幼児にみられるウイルス感染症で、夏を中心に流行します。口の中や手のひら、足の裏などに小さな水疱や発疹がみられるのが特徴です。お尻や膝などに発疹がみられることもあります。
原因となるのは、主にコクサッキーウイルスやエンテロウイルスと呼ばれるウイルスの仲間です。ヘルパンギーナも同じエンテロウイルスの仲間によって起こる感染症で、いわゆる「夏風邪」の代表的なものです。同じウイルス、あるいは近縁のウイルスに感染しても、口の中の症状が中心であればヘルパンギーナ、手足の発疹が目立てば手足口病など、症状の現れ方によって異なる病名で呼ばれます。そのため、両者を厳密に区別することが難しい場合もあります。
多くは数日から1週間程度で自然に改善し、特別な治療薬はありません。抗菌薬(抗生物質)はウイルスには効果がないため、通常は必要ありません。口の中の水疱や潰瘍が痛くて食事や水分が取りにくくなることがあり、特に乳幼児では脱水に注意が必要です。食事が十分に取れなくても、水分が取れて尿が出ていれば、多くの場合は経過をみることができます。
まれですが、原因となるウイルスによっては髄膜炎や脳炎などを合併することがあります。高熱が続く、繰り返し嘔吐する、ぐったりしている、意識状態がおかしいなど、通常の経過と異なる症状がある場合には再受診が必要です。
保育園・幼稚園への登園について
手足口病では、「解熱後○日」といった一律の登園停止期間は定められていません。
症状がなくなった後も便中には数週間ウイルスが排泄されることがあるため、長期間休んでも感染を完全に防ぐことはできません。そのため、発疹がすべて消えるまで登園を控える必要はありません。
発熱がなく、普段どおりの元気があり、食事や水分をおおむね通常どおり取れる状態になれば、登園可能と考えます。
ただし、園によって独自の登園基準を設けている場合がありますので、その場合は通園先の基準もご確認ください。
ヘルパンギーナ
ヘルパンギーナは、主に乳幼児にみられるウイルス感染症で、夏を中心に流行します。突然の発熱とのどの痛みで発症し、のどの奥に小さな水疱や潰瘍がみられるのが特徴です。
原因となるのは、主にコクサッキーウイルスなどのエンテロウイルスの仲間です。手足口病も同じエンテロウイルスの仲間によって起こる感染症で、いずれも一般に「夏風邪」と呼ばれる病気の代表です。同じウイルス、あるいは近縁のウイルスでも症状の現れ方には幅があり、のどの奥の水疱や発熱が中心であればヘルパンギーナ、手足の発疹が目立てば手足口病と診断されます。両者の中間のような症状を示すこともあり、必ずしも明確に区別できるわけではありません。
多くは2~4日程度で自然に解熱し、特別な治療薬はありません。抗菌薬(抗生物質)はウイルスには効果がないため、通常は必要ありません。発熱やのどの痛みに対する対症療法を行いながら自然に改善するのを待ちます。
のどの痛みが強い時期には、食事や水分を取りにくくなることがあります。食事量が一時的に減ること自体は大きな問題ではありませんが、水分がほとんど取れない、尿が明らかに少ない、ぐったりしている場合には脱水に注意が必要です。
高熱に伴って熱性けいれんを起こすことがあります。また、頻度は低いものの、無菌性髄膜炎や脳炎などを合併することがあります。繰り返し嘔吐する、強い頭痛がある、けいれんを起こした、意識状態がおかしいなど、通常の「夏風邪」と異なる症状がみられる場合には再受診が必要です。
保育園・幼稚園への登園について
ヘルパンギーナには、「解熱後○日」といった一律の登園停止期間はありません。
症状が改善した後も便などからウイルスの排泄が長期間続くため、感染を完全に防ぐ目的で長期間登園を控えることにはあまり意味がありません。
発熱がなく、のどの痛みが改善し、普段どおり食事や水分が取れる程度まで全身状態が回復すれば、登園可能と考えます。ただし、園によって独自の登園基準を設けている場合がありますので、その場合は通園先の基準もご確認ください。
溶連菌感染症
A群溶血性レンサ球菌(溶連菌)による咽頭炎では、発熱、強い喉の痛み、扁桃の発赤や白苔、頸部リンパ節の腫れなどがみられます。咳や鼻水が目立つ場合にはウイルス感染症であることが多く、症状や年齢などから溶連菌感染症が疑われる場合に迅速検査を行います。
溶連菌の検査は、誰にでも行えばよいわけではありません
溶連菌は、症状がない子どもの咽頭にも存在することがあります。特に学童期では、症状のない健康な子どもでも一定の割合で溶連菌を保菌しています。
迅速検査そのものは特異度の高い検査ですが、保菌している子どもがウイルス性の風邪をひいた時に検査を行うと、今回の症状の原因はウイルスであるにもかかわらず、溶連菌が陽性になることがあります。
そのため、「発熱や喉の痛みがあれば、とりあえず溶連菌検査をする」という使い方は適切ではありません。 年齢、症状、咽頭所見、咳や鼻水の有無、周囲の流行状況などをみて、検査前に溶連菌感染症らしいかどうかを判断することが重要です。
特に3歳未満では、典型的な溶連菌性咽頭炎そのものが少なく、急性リウマチ熱も非常に稀です。この年齢に溶連菌検査をルーチンに行うと、実際の感染ではなく保菌を拾ってしまい、結果として不要な抗菌薬投与につながる可能性があります。
したがって当院では、乳児や1~2歳児に対して溶連菌迅速検査を一律には行わず、症状や周囲の感染状況などから必要性を判断しています。
なぜ抗菌薬を使うのか
溶連菌性咽頭炎と診断した場合には抗菌薬で治療します。
抗菌薬を使用する目的は、単に喉の症状を早く改善することだけではありません。適切な抗菌薬治療によって、症状の持続期間をある程度短縮し、周囲への感染を減らすとともに、扁桃周囲膿瘍などの化膿性合併症や、急性リウマチ熱の発症リスクを減らすことが期待できます。
急性リウマチ熱は、溶連菌感染後の免疫反応によって関節炎、心炎、不随意運動などを生じる病気です。特に心炎を起こすと心臓弁膜症を残すことがあり、溶連菌性咽頭炎に抗菌薬を使用する重要な理由の一つです。
一方、溶連菌感染後には、血尿、むくみ、高血圧などを伴う急性糸球体腎炎を発症することがありますが、抗菌薬治療によって急性糸球体腎炎を確実に予防できるというエビデンスはありません。
したがって、溶連菌の診療では、必要な患者さんを適切に検査して治療することと、保菌を拾って不必要な抗菌薬を処方しないことの両方が重要です。
インフルエンザ
インフルエンザは、突然の発熱、倦怠感、頭痛、咳、鼻汁などで発症するウイルス感染症です。小児では典型的な高熱を示さないこともありますが、一般的な風邪と比べて全身症状が強く、熱性けいれん、肺炎、中耳炎などを合併することがあります。
多くは自然に改善しますが、乳幼児や基礎疾患のあるお子さんでは重症化することがあります。また、頻度は高くありませんが、インフルエンザ脳症は小児で特に注意すべき合併症です。
年齢、症状、発症からの時間、周囲の流行状況などを考慮し、必要に応じて検査や抗インフルエンザ薬による治療を行います。
インフルエンザワクチンについて
インフルエンザワクチンを接種していても、インフルエンザにかかることはあります。流行するウイルス株は毎年変化するため、ワクチンの感染予防効果もシーズンによって異なります。
一方で、ワクチン接種にはインフルエンザの発症を減らす効果があり、小児の入院や重症化を減らす効果も報告されています。そのため当院では、原則として毎シーズンの接種をお勧めしています。
現在、小児に使用できるワクチンには、従来から使用されている**不活化インフルエンザワクチン(注射)と、鼻腔内に噴霧する弱毒生インフルエンザワクチン(フルミスト®)**があります。
不活化インフルエンザワクチン
生後6か月から接種できます。ウイルスそのものが体内で増殖するワクチンではないため、ワクチン接種によってインフルエンザを発症することはありません。
主な副反応は接種部位の痛み、腫れ、発熱などで、多くは一時的です。非常にまれですが、他のワクチンと同様に重いアレルギー反応などを起こすことがあります。
経鼻弱毒生インフルエンザワクチン(フルミスト®)
国内では2歳から19歳未満が対象で、左右の鼻腔に噴霧し、1シーズン1回の接種で終了します。注射を必要としないことは、小児にとって大きな利点です。
弱毒化した生きたウイルスを使用するため、接種後に鼻汁、鼻づまり、咽頭痛、発熱などがみられることがあります。
不活化ワクチンとフルミスト®のどちらが優れているかについては、現在のところインフルエンザ罹患予防効果に明確な優劣はないとされています。
一方、喘息のあるお子さん、免疫機能が低下している方、妊婦などでは不活化ワクチンを選択します。また、同居家族に高度の免疫不全者がいる場合なども、生ワクチンであることを考慮して選択する必要があります。
したがって、「鼻から接種する方がよく効く」「注射の方が確実」という単純な違いではなく、年齢、基礎疾患、接種回数、注射に対する抵抗などを考えて選択します。
抗インフルエンザ薬について
インフルエンザは自然に改善することも多く、すべての患者さんに抗インフルエンザ薬が必須というわけではありません。
一方、乳幼児、基礎疾患がある場合、症状が強い場合などでは抗インフルエンザ薬による治療を積極的に考えます。一般に発症後48時間以内に開始した場合に最も効果が期待できますが、重症化リスクが高い場合や症状が遷延している場合には、48時間を過ぎていても治療を行うことがあります。
小児では、オセルタミビル(タミフル®)、バロキサビル(ゾフルーザ®)、吸入薬であるザナミビル(リレンザ®)・ラニナミビル(イナビル®)、点滴薬であるペラミビル(ラピアクタ®)などを、年齢や病状に応じて使い分けます。
オセルタミビル(タミフル®)について
オセルタミビルは小児で最も使用経験の多い抗インフルエンザ薬の一つです。特に乳幼児や重症例では重要な選択肢となります。
以前、オセルタミビルと異常行動との関連が社会的に大きく取り上げられたことがあります。しかし、インフルエンザそのものでも、発熱に伴うせん妄、異常行動、けいれん、意識障害などの神経症状がみられます。
現在までの研究から、オセルタミビルを服用することによってインフルエンザ脳症や重篤な神経症状のリスクが増えるという根拠はありません。 むしろ、近年の研究ではオセルタミビル治療を受けた小児で、けいれん、意識障害、脳炎などを含む重篤な神経学的イベントが少なかったという報告もあります。
ただし、オセルタミビルを投与すればインフルエンザ脳症を確実に予防できる、というところまで証明されているわけではありません。
抗インフルエンザ薬の使用の有無にかかわらず、特に発熱後早期には異常行動がみられることがあるため、小児を一人にしないなどの注意が必要です。
ゾフルーザ®と耐性ウイルスについて
バロキサビル(ゾフルーザ®)は、1回の内服で治療が終了するという利点があり、ウイルス量を速やかに低下させます。また、B型インフルエンザでは他の薬剤より有熱期間が短かったとする報告もあります。
一方で、この薬には薬剤に対する感受性が低下した変異ウイルスが治療中に出現することがあるという特徴があります。特に低年齢の小児、A型インフルエンザで問題となりやすいことが分かっています。
このため、単に「1回飲めば済むから」という理由だけで、すべての小児にゾフルーザ®を選択することは適切ではありません。
日本小児科学会の現在の指針では、12歳以上では他の抗インフルエンザ薬と同様に使用でき、6~11歳ではB型には使用が提案される一方、A型には慎重な判断が求められています。5歳以下では、特にA型について積極的な使用は推奨されていません。
当院でも、年齢、インフルエンザの型、基礎疾患などを考慮して薬剤を選択します。
家族がインフルエンザになった場合の予防内服
インフルエンザ患者と濃厚に接触した場合、オセルタミビルなどの抗インフルエンザ薬を発症前から使用することで、インフルエンザの発症リスクを下げることができます。
ただし、家族の一人がインフルエンザになったからといって、健康な家族全員に予防内服を行うことは通常ありません。
重症化リスクの高い基礎疾患がある方などが家庭内で濃厚に曝露した場合には、年齢や基礎疾患、ワクチン接種状況、曝露からの時間などを考慮して予防内服を検討します。
予防内服はワクチンの代わりになるものではなく、インフルエンザ予防の基本は毎シーズンのワクチン接種と一般的な感染対策です。
熱性けいれんとインフルエンザ脳症
インフルエンザでは高熱に伴って熱性けいれんを起こすことがあります。短時間で止まり、その後速やかに普段の状態に戻る典型的な熱性けいれんであれば、多くの場合、脳に障害を残すものではありません。
一方、けいれんが長く続く、短時間に繰り返す、けいれんが止まっても意識が戻らない、呼びかけに対する反応がおかしい、意味不明な言動が長時間続くなどの場合には、インフルエンザ脳症を含む中枢神経合併症を考える必要があります。
突発性発疹
突発性発疹は、主に乳幼児にみられるウイルス感染症です。多くはヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)、一部はヒトヘルペスウイルス7(HHV-7)の初感染によって起こります。多くの子どもが乳幼児期に感染する、ごく一般的な感染症です。
典型的には、突然39~40℃前後の高熱が出て3~4日程度続き、解熱する頃になって体幹を中心に赤い発疹が広がります。発疹そのものに強いかゆみはなく、数日で自然に消えていきます。
「熱が下がったのに発疹が出てきた」と心配されることがありますが、解熱前後に発疹が出現するのが突発性発疹の典型的な経過です。 むしろ発熱している時点では、他のウイルス感染症と区別できないことが多く、解熱後に発疹が出て初めて突発性発疹だったと分かることも少なくありません。
一方、すべての感染で典型的な発疹が出るわけではありません。HHV-6やHHV-7に初感染しても発疹が目立たず、発熱だけで終わることもあります。
高熱と熱性けいれん
突発性発疹では高熱が出ることが多く、熱性けいれんを起こしやすい感染症の一つです。
HHV-6は熱性けいれんとの関連が比較的強く、突発性発疹に伴うけいれんでは、長く続いたり、同じ発熱期間中に繰り返したりすることもあります。
短時間で自然に止まり、その後速やかに普段の状態に戻る典型的な熱性けいれんであれば、多くの場合、後遺症を残すものではありません。
一方、けいれんが5分以上続く、短時間に繰り返す、けいれん後も意識状態がなかなか戻らない場合などには、通常の熱性けいれん以外の病態も考えて評価する必要があります。
まれに脳炎・脳症を起こすことがあります
HHV-6感染では、頻度は低いものの脳炎・脳症などの中枢神経合併症を起こすことがあります。
高熱に伴って一時的にぼんやりすることと、脳炎・脳症による意識障害を発熱初期に区別することは必ずしも容易ではありません。
けいれんが長時間続く、けいれんを繰り返す、呼びかけへの反応が明らかに悪い、意識状態がおかしい状態が続くなどの場合には、速やかな受診が必要です。
治療について
突発性発疹には、通常、特別な抗ウイルス薬は必要ありません。発熱時には水分摂取を保ち、必要に応じて解熱薬を使用するなどの対症療法を行います。
高熱そのものの数字よりも、水分が取れているか、尿が出ているか、呼びかけに普段どおり反応するかなど、全身状態をみることが重要です。
また、解熱して発疹が出る頃に機嫌が悪くなるお子さんもよくみられます。発疹が出たこと自体は病状の悪化を意味するものではなく、全身状態が改善していれば通常は経過観察で問題ありません。
胃腸炎
子どもの急性胃腸炎の多くはウイルス感染によって起こります。嘔吐、下痢、腹痛、発熱などがみられ、原因としてノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスなどがあります。多くは数日から1週間程度で自然に改善します。
胃腸炎で特に注意する必要があるのは脱水です。特に乳幼児では、嘔吐や下痢が続くと比較的短時間で脱水が進むことがあります。
原因ウイルスを調べる検査は必要?
ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスなどを調べる迅速検査がありますが、通常の急性胃腸炎では、原因ウイルスを特定することに大きな意味がない場合がほとんどです。
いずれも治療の基本は水分補給などの対症療法であり、「ロタウイルスだからこの薬」「ノロウイルスだからこの薬」というように治療が変わるわけではありません。
そのため当院では、胃腸炎が疑われるお子さん全員に迅速検査を行うことはしていません。症状や経過から細菌性腸炎など別の病気を疑う場合や、原因を確認することが診療上必要な場合には、便検査などを検討します。
最も大切なのは水分が取れているかどうかです
嘔吐しているときには、一度に大量に飲ませると再び吐いてしまうことがあります。少量ずつ、回数を分けて飲ませることが基本です。
脱水がある場合には、糖分とナトリウムを適切な濃度で含む経口補水液が、水分と電解質を効率よく補うために適しています。
一方、元気があり、水やお茶、母乳、ミルクなどを普段どおり飲めていて、尿もしっかり出ているのであれば、必ずしも経口補水液を飲ませる必要はありません。
経口補水液は「胃腸炎になったら必ず飲まなければならない飲み物」ではなく、主に嘔吐や下痢によって失われた水分と電解質を補うためのものです。
味を嫌がってORSを飲まない子どもに、飲めている水やお茶をやめてまで無理に飲ませる必要はありません。軽症であれば、まずは本人が飲めるものから水分を取ることが大切です。
ただし、嘔吐や下痢が多く脱水が進んでいる場合には、水やお茶だけでは失われたナトリウムなどを十分に補えないため、経口補水液が適しています。
食事はどうすればよい?
嘔吐が落ち着いて水分が取れるようになれば、長期間食事を制限する必要はありません。おかゆやうどんだけに限定する必要もなく、食欲に応じて年齢相応の普段の食事を再開して構いません。
乳児では母乳を継続して問題ありません。ミルクも通常は薄める必要はありません。
食欲がないときに無理に食べさせる必要はありませんが、下痢が完全に止まるまで絶食する必要もありません。
薬について
急性胃腸炎では、水分補給が治療の中心です。
整腸剤が処方されることもありますが、その効果は限定的であり、水分補給に代わるものではありません。また、小児の感染性胃腸炎では、腸の動きを強く抑える止痢薬を安易に使用することはありません。
ウイルス性胃腸炎に抗菌薬(抗生物質)は効果がありません。血便、高熱、強い腹痛などがあり細菌性腸炎が疑われる場合には、必要に応じて便検査などを行い、治療方針を判断します。
点滴が必要になるのはどんなとき?
嘔吐していても、少量ずつ水分が取れているのであれば、必ずしも点滴は必要ありません。
一方、水分をほとんど受け付けない、飲んでも繰り返し吐く、尿が明らかに減っている、口の中が乾いている、顔色が悪い、ぐったりしているなどの場合には、脱水が進んでいる可能性があります。
経口で十分な水分を補えない場合や脱水が強い場合には、点滴による水分・電解質の補充が必要になります。
嘔吐=胃腸炎とは限りません
子どもの嘔吐がすべて胃腸炎によるものとは限りません。
強い腹痛を繰り返す、血便がある、緑色のもの(胆汁)を吐く、お腹が強く張っている、ぐったりして反応が悪いなどの場合には、腸重積や腸閉塞など胃腸炎以外の病気を考える必要があります。
乳幼児では、尿路感染症などでも発熱と嘔吐がみられることがあります。
胃腸炎では「何回吐いたか」「下痢が何回あったか」だけではなく、水分が取れているか、尿が出ているか、普段と比べて元気があるかをみることが重要です。



