小児の神経疾患の症状としては、発達の遅れ、けいれん発作、頭痛、運動・歩行の問題、感覚の異常(痛み、むずむずする)などがあります。それらの症状をきたす疾患には、染色体・遺伝子異常、周産期脳障害、熱性けいれん、脳炎脳症、てんかんなど様々なものがあります。
フォロー中の神経疾患
- 熱性けいれん、熱せん妄
- 胃腸炎関連けいれん
- てんかん(中心側頭部棘波を示す自然終息性てんかん(ローランドてんかん)、小児欠神てんかん、乳児てんかん性スパズム症候群(点頭てんかん・ウエスト症候群)、レノックス・ガストー症候群、ドラべ症候群、若年ミオクロニーてんかん、前頭葉てんかん、急性脳症後てんかん、内側側頭葉てんかんなど)
- 不随意運動(発作性運動誘発性舞踏病、チック、身震い発作)
- 染色体異常・遺伝子異常 (ダウン症、Kabuki症候群、Prader Willi症候群、PURA関連神経発達異常症、GPIアンカー欠損症など)
小児神経ってどんな科?
小児神経ではどんな病気を診るのでしょうか。
代表的な小児神経疾患の症状や治療法などに関する日本小児神経学会のページはこちら
当院では小児神経疾患の中でも特に熱性けいれん、てんかんなどの発作性疾患に関する受診の患者さんを数多く診療しております。必要に応じて脳波検査や血液検査を行った上で、患者さん一人一人の生活に合わせた治療・管理を提案いたしております。
【FAQs】頻度の高いご相談内容としては以下のようのものがあります。
- 乳児の動きがてんかん発作なのか?
- 発熱時の異常言動、異常行動が見られる
- 熱性けいれんで予防は必要なのか? 何歳まですべきなのか?
- 熱性けいれんを起こしたが予防接種はどうすれば良いのか?
- 複数回熱性けいれんを起こしているが、脳波検査の必要性は?
- てんかんがあるが、学校や幼稚園での生活はどうすれば良いのか?
- 熱性けいれん、てんかん発作を頻回に繰り返しているが、知能への影響は?
- 急性脳症であったと言われたが、今後何に気をつけたら良いのか?
てんかん患者さんの再診は専用アプリであるnana-mediを利用したオンライン診療でも行なっております。ご希望の方はお申し出ください。
熱性けいれん
熱性けいれん(熱性発作)とは
乳幼児が発熱に伴って起こすけいれん(てんかん発作)です。初めて目の前で子どもがけいれんすると保護者にとって非常に大きな不安がありますが、多くの熱性けいれんは短時間で自然に止まり、その後に後遺症を残すものではありません。一方、長時間続くけいれんや、けいれん後も意識状態が改善しない場合などには、通常の熱性けいれん以外の病態も考える必要があります。
けいれんしたとき家庭でどうすればよいか
安全な場所に寝かせ、顔を横に向け、何分続いているかを確認することが重要です。口の中に物を入れたり、無理に押さえつけたりする必要はありません。可能であればスマートフォン等で発作の様子を動画撮影しておくと、後の診断に非常に役立つ場合があります。
救急車を呼ぶ目安
熱性けいれんでの唯一の緊急事態は、発作が止まらなないこと(重積状態)です。けいれんが5分以上続く場合、繰り返す場合、呼吸状態が悪い場合、けいれん後の意識の回復が遅い場合などには、救急車の利用をご検討ください。けいれん後の意識障害の評価が難しい場合には、しっかり覚醒させて徐々に意識状態が改善していくのかを確認します。十分に覚醒しない場合、覚醒しているのかどうかわからない場合には救急要請をお勧めします。
熱性けいれんとてんかんの違い
「熱性けいれん」と「てんかん」は、けいれんの現象そのものがまったく別のものというわけではありません。
熱性けいれんでみられる発作も、脳の神経細胞が一時的に過剰に興奮して起こるてんかん発作(epileptic seizure)と同じ現象です。
両者の大きな違いは、発作が発熱という誘因があるときだけに起こるのか、それとも発熱などの明らかな誘因がない状態でも繰り返して起こるのかという点にあります。
典型的な熱性けいれんでは、乳幼児期に発熱したときだけ発作を起こし、年齢とともに発作を起こしにくくなっていきます。一方、てんかんでは、発熱のない状態でも非誘発性発作を繰り返すことがあります。
ただし、両者の境界は必ずしも明瞭ではありません。
発熱時のけいれんが通常より長く続く、頻回に繰り返す、6歳を過ぎても続く、あるいはその後に発熱のない発作も起こる場合には、GEFS+(Generalized Epilepsy with Febrile Seizures Plus)など、熱性けいれんとてんかんの中間的な性質をもつ病態を考えることがあります。
さらに乳児期早期から、発熱に伴う長いけいれんや片側性のけいれんを繰り返す場合には、Dravet症候群などの遺伝性てんかんが背景にあることがあります。
このように、
典型的な熱性けいれん
→ 熱性発作を繰り返す病態
→ GEFS+
→ Dravet症候群などの遺伝性てんかん
は、完全に独立した病気というより、発熱によって発作を起こしやすいという共通した性質をもつスペクトラムとして捉えられる部分があります。
ただし、Dravet症候群は単なる「重い熱性けいれん」ではなく、遺伝的背景をもつ発達性・てんかん性脳症であり、長期的な経過や治療方針は典型的な熱性けいれんとは大きく異なります。
脳波で熱性けいれんとてんかんを区別できる?
脳波だけで両者を区別することはできません。
てんかんのあるお子さんでも、発作と発作の間の脳波が正常であることは珍しくありません。逆に、脳波にてんかん性放電がみられたからといって、それだけで臨床的なてんかんと診断できるわけでもありません。
特にDravet症候群では、発症初期の乳児期には脳波が正常であることが多く、発作を繰り返す中で徐々にてんかん性放電や背景活動の異常が明らかになってくることがあります。
そのため、熱性けいれんとてんかんの鑑別で最も重要なのは、脳波検査そのものではなく、
- 何歳で発症したか
- 発作が何分続いたか
- 左右差があったか
- 同じ発熱中に繰り返したか
- 発熱のない時にも発作があるか
- 発達経過に変化がないか
- 家族に熱性けいれんやてんかんがあるか
といった発作の経過全体をみることです。
典型的な単純型熱性けいれんでは、脳波検査を行っても将来のてんかん発症を正確に予測することはできず、通常はルーチンに脳波検査を行う必要はありません。
熱性けいれんと急性脳炎・脳症の違い
熱性けいれんと急性脳炎・脳症を、発作の見た目だけで完全に区別することはできません。
実際の診療で最も重要なのは、けいれん・発作が止まった後に、どのように意識状態が回復してくるかです。
通常の熱性けいれんでも、発作直後には眠り込んだり、ぼんやりしたりすることがあります。これは発作後の状態として珍しいことではありません。多くの場合、時間の経過とともに徐々に反応が良くなり、普段の意識状態に戻っていきます。
一方、脳炎・脳症でも発熱とけいれんで発症することがあり、発症直後の段階では通常の熱性けいれんとの区別が難しいことがあります。さまざまな検査や研究が行われていますが、家庭で観察できる最も重要な違いは、けいれん・発作後にきちんと覚醒してくるかどうかです。
けいれんが止まった後に眠っている場合には、呼びかけたり、肩や体に触れたりして、反応があるかを確認してください。目を開ける、嫌がる、泣く、保護者を認識するなど、時間とともに反応が改善してくることが大切です。
強くつねる、眼の周囲を圧迫するなど、家庭で痛み刺激を加えて無理に起こす必要はありません。
次のような場合には、通常の熱性けいれんだけではない可能性を考え、救急受診を検討します。
- けいれんが5分以上続く
- けいれんを短時間に繰り返す
- けいれんが止まっても呼びかけへの反応が明らかに悪い
- 時間が経っても覚醒する方向に改善しない
- 意味不明な言動や異常行動が持続する
- 呼吸状態や顔色がおかしい
特に、発作後30分~1時間たっても普段の意識状態に戻らない、あるいは途中で反応が悪くなっていく場合には、早めの救急受診を勧めます。
熱性けいれんと急性脳炎・脳症の鑑別では、時間とともに覚醒・反応性が改善しているかを見ることが重要です。
熱性けいれんの後に脳波検査は必要か
典型的な熱性けいれんでは、すべてのお子さんに脳波検査を行う必要はありません。
脳波検査は「熱性けいれんだったのか、てんかんだったのか」を判定する検査ではありません。てんかんのあるお子さんでも発作と発作の間の脳波が正常であることは珍しくなく、逆に脳波にてんかん性放電がみられても、それだけでてんかんと診断することはできません。
また、熱性けいれん後の脳波検査によって、熱性けいれんの再発や将来のてんかん発症を正確に予測できるわけでもありません。
したがって、典型的な単純型熱性けいれんに対して「念のため脳波をとっておく」という検査は、通常必要ありません。
一方、発作に明らかな左右差がある、発熱のないときにも発作が疑われる、通常の熱性けいれんとしては発症年齢や発作の様子が非典型的である、発達や神経学的所見に気になる点があるなどの場合には、てんかんなど別の病態を考えて脳波検査を行うことがあります。
MRIなどの検査は必要か
典型的な熱性けいれんでは、MRIやCTなどの画像検査も通常必要ありません。
MRIは「熱性けいれんがあったから撮影する」検査ではなく、脳に発作の原因となる構造的な異常がないかを調べる必要がある場合に行う検査です。
そのため、単に発作を繰り返したという理由だけでMRIが必要になるわけではありません。
一方、発作に明らかな左右差がある、発作後に麻痺などの神経症状が残る、発達の遅れや退行がある、発熱のない発作もみられる、非常に長い発作を起こしたなど、通常の熱性けいれんだけでは説明しにくい所見がある場合には、MRIを検討します。
熱性けいれんは繰り返すのか
熱性けいれんを経験したお子さんの多くは、その後発作を起こしません。一方で、全体のおよそ30%、すなわち3人に1人程度は、その後の発熱時に熱性けいれんを繰り返します。
再発しやすさには個人差があります。日本の「熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023」では、再発しやすい因子として、
- 両親やきょうだいに熱性けいれんの既往がある
- 初回の熱性けいれんが1歳未満である
- 発熱に気づいてから1時間以内に発作が起こった
- 発作時の体温が39℃以下である
の4つが挙げられています。
これらの因子が一つもない場合の再発率は約15%ですが、いずれかを有する場合には再発する確率が高くなります。また、発熱して間もない時期や、まだ体温がそれほど高くない段階で発作を起こしたお子さんの方が、次回以降も熱性けいれんを起こしやすいことが知られています。これは、それぞれのお子さんによって「発熱によって発作を起こす閾値」が異なるためと考えると理解しやすいでしょう。
また、熱性けいれんを繰り返すことと、てんかんになることは同じではありません。 熱性けいれんを何度か経験しても、その後、発熱のない状態で発作を起こすことなく成長するお子さんが大部分です。
したがって、熱性けいれん後の診療では、単に「何回けいれんしたか」だけではなく、発作の年齢、発熱との関係、発作の長さや左右差、発達経過、家族歴などを総合して、そのお子さんの発作の性質を考えていくことが重要です。
けいれん予防薬(ダイアップ®など)は必要か
熱性けいれんを経験したすべてのお子さんに、発熱のたびにダイアップ®(ジアゼパム坐薬)を使用する必要はありません。
ジアゼパムを発熱時に使用すると、熱性けいれんの再発を減らす効果があります。しかし、熱性けいれんの多くは短時間で自然に止まり、後遺症を残さない一方、ジアゼパムには眠気、ふらつき、反応が鈍くなるなどの副作用があります。
また、発熱に気づくより先にけいれんが起こるお子さんでは、予防投与そのものが間に合わないこともあります。
そのため、「一度熱性けいれんを起こしたから、次から必ずダイアップを使う」という考え方ではありません。
日本の診療ガイドラインでは、たとえば15分以上続いた発作の既往がある場合や、焦点性発作、同じ発熱中の反復、発達上の問題、家族歴、乳児期早期の発症、発熱後まもなく発作を起こすといった複数の特徴をもつ場合などに、発熱時のジアゼパム予防投与を検討します。
ここで重要なのは、ダイアップによる予防投与の目的は、熱性けいれんの再発を減らすことであり、将来てんかんになることを予防したり、発達予後を改善したりするための治療ではないという点です。
当院では、単に発作の回数だけでなく、発作の長さ、左右差、発症年齢、発熱から発作までの時間、発達歴、家族歴などをみたうえで、予防投与によるメリットが大きいと考えられる場合にご提案しています。
熱性けいれんがあっても予防接種を受けてよいか
熱性けいれんの既往があっても、原則として通常どおり予防接種を受けることができます。
ワクチンによっては接種後に発熱することがあり、その発熱をきっかけとして熱性けいれんを起こすことはあります。しかし、そのことを理由に必要な予防接種を控える必要はありません。日本小児神経学会のガイドラインでも、熱性けいれんの既往児について、当日の体調に問題がなければ原則としてすべての予防接種を受けてよいとしています。
以前は「熱性けいれんの後は2~3か月ワクチンをあける」と説明されることもありましたが、一定期間あけることによって接種後の発作リスクが低下するという根拠はありません。 現在のガイドラインでは、熱性けいれんと診断され、その後の対応について説明が済んでいれば、最終発作からの期間だけを理由に接種を延期する必要はないとされています。
一方、15分以上続く発作を経験している場合や、乳児期早期から発熱に伴う長い発作を繰り返している場合などには、Dravet症候群を含む遺伝性てんかんが背景にないかを考え、接種後に発熱した場合の対応についてあらかじめ相談しておくことがあります。
なお、Dravet症候群では予防接種後の発熱を契機として最初の発作が起こることがありますが、ワクチンによってDravet症候群が生じるわけではありません。 もともとの遺伝的な発作の起こりやすさが、ワクチン後の発熱を契機に初めて表面化したものと考えられています。
熱性けいれんは脳や発達に影響するのか
典型的な短時間の熱性けいれんが、脳を傷つけたり、その後の知的発達や学習能力を低下させたりするという根拠はありません。
特に単純型熱性けいれんについては、繰り返した場合も含めて、その後の知的能力や学習能力に明らかな悪影響を認めなかった大規模研究があります。日本小児神経学会のガイドラインも、単純型熱性けいれんを繰り返すことによって認知・学習能力が低下する根拠はないとしています。
したがって、数分程度の典型的な熱性けいれんについて「けいれんしたことで脳細胞が傷ついたのではないか」と過度に心配する必要はありません。
一方で、熱性けいれんを起こしたお子さんの中には、もともと発達上の特徴をもっていたり、遺伝性てんかんなど別の神経学的背景をもっていたりするお子さんも含まれます。
そのため、「熱性けいれんが発達の遅れを起こした」のか、「もともとの神経学的背景の一つとして熱性発作も起こしている」のかは区別して考える必要があります。
発作が非常に長い、焦点性である、発熱のない発作も起こる、発達が停滞・退行するなどの場合には、典型的な熱性けいれんとは別に評価が必要です。
熱性けいれんを繰り返すと、てんかんになりやすいのか
熱性けいれんを経験したお子さんは、経験していないお子さんと比較すると、将来的にてんかんを発症する割合はやや高くなります。
日本小児神経学会の2023年ガイドラインでは、熱性けいれんを経験したお子さんが、その後発熱などの明らかな誘因がない発作を繰り返しててんかんと診断される割合は、およそ2~7.5%とされています。一般人口でのてんかん発症率0.5~1%よりは高いものの、裏返せば熱性けいれんを経験したお子さんの90%以上は、その後てんかんを発症しません。
また、「熱性けいれんを繰り返したために脳が傷つき、てんかんになった」と単純に考えるのは適切ではありません。
むしろ一部のお子さんでは、もともと脳が発作を起こしやすい素因があり、その最初の現れ方が発熱時の発作で、その後に発熱のない発作も起こるようになると考えた方が理解しやすい場合があります。
てんかんを発症しやすい因子としては、
- もともとの発達・神経学的異常
- 両親やきょうだいのてんかん
- 焦点性、15分以上、同じ発熱中に反復するなどの複雑型熱性けいれん
- 発熱してから1時間以内に発作を起こす
- 3歳以降に熱性けいれんを発症する
などが知られています。
つまり、「熱性けいれんを何回起こしたか」だけで、将来てんかんになるかどうかを判断することはできません。
典型的な熱性けいれんを数回繰り返しているだけのお子さんの多くは、その後、発熱のない発作を起こすことなく成長します。一方で、発作の年齢や性状、発熱との関係、発達経過、家族歴などに非典型的な特徴がある場合には、GEFS+やDravet症候群などを含めた評価が必要になることがあります。
てんかんが疑われる場合(非誘発性発作を認めた場合)
1)一過性意識消失発作(初回発作)後の診療
初めて一過性に意識を失ったり、けいれんしたりした場合には、1)神経細胞の過剰同期、過興奮から起こるてんかん発作、2)全脳の一過性血流低下による失神、3)精神症状によるものが挙げられます。このような状態に対して、詳しい問診、診察、脳波検査などを行い、ガイダンスや治療を行います。また学校園での生活の管理、合併する発達障害などについてもあわせて対応いたします。
多くの方は適切な診断と治療により、学校生活や社会生活を安心して送ることができます。

2)こんな症状があるときはご相談ください
以下のような症状が見られる場合には、一度ご相談ください。
- けいれんを起こした
- 呼びかけに反応せず、数秒間ぼんやりすることがある
- 体の一部(顔・手足など)がピクピク動くことがある
- 夜中に突然のけいれんや異常な動きが見られる
- 「てんかんではないか」と言われた、またはご家族にてんかんの方がいる
発作は一度だけでも、てんかんかどうかを判断するためには脳波などの検査が役立ちます。気になる症状があるときは、早めの受診をおすすめします。
3)当院での脳波検査
当院では脳波検査による発作性疾患の評価を行っています。検査当日は通常より1−2時間睡眠時間を短くしてご来院いただき、来院後必要であれば睡眠剤を内服していただきます。検査時間は電極の貼り付けから検査終了まで約1時間かかります。検査終了後は電極ペーストが頭部に残ります。簡単な清拭は行いますが、洗髪はご自宅でお願いいたします。

そのほかの小児神経疾患
当院ではてんかん以外の小児神経疾患にも幅広く対応いたします。頭痛・発達の遅れ・睡眠や行動の問題、重症心身障害などに対して、脳波検査や発達検査を活用し、当院で可能な対応を行うとともに、必要に応じて適切な高次医療機関や療育施設にご紹介いたします。



